暁天の星


太陽が消えた。


夕焼け空だけ残して。



菫と颯太に振り回されつつ、ずっと笑ってるリュウが遠くに見えた。




すぐそこにいるはずなのに、そんなに遠くなんてないのに、襲ってくる暗闇があたし達の距離を引き延ばしてしまうの?




お願いだからあんまり遠くに行かないで。






「ねえ、ハル。リュウはもう分身みたいなものだと思っちゃってるよ、あたし。」




こんなこと言わなくたってハルは分かりきってることかな。


あたしの不意な言葉に、ハルは眉を寄せた。




「何?急に。」

「ほら、さっき言ってたじゃない。リュウに見惚れてたの?って。」




怪訝そうな顔をしてることは横を見なくても分かるよ。




「リュウだけじゃない。みんなのこと、ちゃんと見ておかないと不安になるだけだよ。」

「なにそれ。」

「…なんだろうね。」



自分でもよく分からないけどさ。


どの瞬間も見逃したくなんてないじゃない。






< 92 / 135 >

この作品をシェア

pagetop