新・鉢植右から3番目


 私は自分の額に引っ付けていた冷えピタを指差して、ひっく~い声で言った。

「私は熱が出てるのよ。ついでに、股も裂けてるの、お尻のところまで。そこは何と縫われてるわけよ。痛い痛い痛い思いをして、桜を産んだわけよ。作るのは共同でも産むのは私だけって何か理不尽よね。と、いうことで、こお~んなしんどい仕事をした私に、共同で作った責任者として、言うべきねぎらいの言葉があるでしょうがよ、ほらほらほら」

 ヤツは、ため息をついた。失礼なオッサンだ。何だそのあからさまな仕方ね~な態度は。

 私は寝転んだままでヤツにむけて中指をつきたててやる。ヤツはしれっとした顔のままで呟いた。

「・・・お疲れ様」

「ため息が気に入らないけど、まあいいとするわ。それで、何なの?」

 ヤツはドアに手をかけたままで振り返った。愛想のない顔には、何が?って大きな文字が書かれている。私の質問の意味が判らなかったらしい。

 優しい私は言いなおしてあげることにした。

「桜の花言葉よ。知ってるんでしょ?それで、名前を決めたんでしょ?」

 ヤツは珍しく、表情を出した。

 にやりと笑って、また伸びている前髪の間から私を見る。そして淡々と言った。

「優れた美人・純潔・精神美・淡泊」

 するりとドアを開けてそのまま出る。そして、静かに病院の廊下を去って行った。

 部屋に残された私は苦笑した。


 ・・・淡白。・・・あなたに似たら、そうなるわねって。




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