プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

もしかしたら雪さんに淹れてもらったことがあるかもしれない。


「確か、熟すとピンク色になる豆ですね」

「はい。希少価値が高くてなかなか手に入らないそうなんですが、それを店頭で淹れてお客様にお出しするんです」


祐希が軽く目を見開いた。


「なかなか手に入らないのなら、量の確保が厳しいんじゃないですか?」

「それは……コーヒー豆を扱うお店を当たってみないとなんとも言えないんですが、珍しい豆で淹れたコーヒーなら、ちょっと話題性があっていいなと思ったんです。エンジェルレインのお客様は女性ですから、“ピンク色”と“珍しい”という女性の好きそうなキーワードに惹かれると思うんです」


祐希は腕を組んで考え込み始めた。
眉間に皺を寄せて、テーブルを凝視している。

却下か採用か。
どちらに傾いているのか、その表情からは判断がつかなかった。


「豆のローストは?」

「それにはちょっとあてがあります」


雪さんに頼めないかと勝手に考えていた。
雪さんは、ピンクブルボンにはローストにコツがあると言っていた。

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