プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
失敗すると酸味が強くなりすぎると。
そうなると、慣れない私やほかの人がやるよりも雪さんにお願いしたほうが確実だ。
せっかく振る舞うのだから、私が感動したような美味しいコーヒーにしたい。
雪さんの了承を得てはいないけれど……。
「お客様にお出しするカップとかの備品類は?」
「それも手配できると思います」
百均で安く手に入るだろうという安直な考えだ。
「多く見積もって五百人分ですが、用意できますか?」
――五百人分!
そこまで膨大な量だとは予想外だった。
面食らって目を瞬かせていると、祐希は目を鋭く細めた。
“できないことを提案するな”と言われたようで、背筋がピンと伸びる。
「集めてみます」
「難しいならやめておいたほうがいいです。このまま通常通りのオープンイベントでゴーサインが出ていますから」
私の言葉のニュアンスが気に入らなかったらしい。
でも、いつもと違ったことをしたいと言っていたのは祐希だ。