プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
身体はほんのり熱く、頭がボーっとしてきた。
でも、気持ちが悪いわけではない。
逆にふわふわしていい心地だ。
とはいえ、みんながそばで楽しそうに飲んでいるというのに、その輪に入れずひとりで飲むには強い精神力が必要だ。
それに、祐希と涼香さんの仲睦まじさを見ているのも、さすがにきつい。
私はいてもいなくても、突然消えようが誰も構わないだろう。
紙コップをごみ箱へ投入し、バッグを取って店を出た。
さすがに十二月も半ばを過ぎると空気の冷たさは半端ない。
お酒で上がった体温は、歩くうちにどんどん奪われていく。
ほろ酔いじゃなかったら、もっと寒さが身に染みたかもしれない。
マフラーをしてこなかったことを後悔した。
コートの襟を立てて首をすくめながら歩いていると、背後から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
聞き覚えのない声だ。
聞き間違いかもしれないと思いながら振り返る。
すると、大股で走ってくる男の人の姿が目に入った。
「牧瀬さん!」
私ではない“牧瀬”かもしれない。
そう思いながらうしろを振り返るが、私以外に反応する人はいない。
人差し指で「私?」と自分の胸を指差した。