プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

就業規則や服務規律の冊子もあったのは知っている。
でも、即戦力につながるとは思えないもので、つい後回しに。


「そういうことを言いたいんじゃないんですけどね」


それじゃなにを言いたいというのか。
あきれた表情の祐希を下からポカンと見上げた。


「真壁さん、すみませんでした。話しかけたのは私のほうなんです」


隣から江橋さんがおどおどとした様子で謝った。


「これで最後にしますので、ちょっと見逃してください」


江橋さんはそう祐希に断ってから、「牧瀬さん、お昼は持って来ていますか?」と質問してきた。
唐突な質問に首を横に振る。


「それじゃ、お昼は一緒に社員食堂に行きませんか?」


――社員食堂。
なんて素敵な響きなんだろう。
これぞまさしく“OL”というキーワードに結びつくもの。
聞いただけでウキウキしてしまう。


「はい!」


元気よく頷いたところで、再び不穏な空気に包まれる。
その出所は、言うまでもなく祐希だった。

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