プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
◇◇◇
「日菜子様、失礼します」
ノックのあと、ドアの向こうで声が響く。
雪さんだ。
自室のソファで足を投げ出した状態で「はーい」と返事をすると、彼女が箱を抱えて入って来た。
「手当てをいたしましょう」
抱えているのは救急箱みたいだ。
私の前に跪き、中から湿布と包帯を取り出す。
ジョギングから帰ってすぐ、私は雪さんの素早い応急処置で足にアイスノンを巻かれた。
なんと、擦りむいた膝ではなく足首が若干腫れていたのだ。
そんな状態の私を見て、お父さんはすぐに救急車だと息巻いたが、祐希に宥められてなんとか“119”を呼び出さずに済んだ。
清美おばさんに至っては、「嫁入り前の大事な身体が!」なんて言って、これまた大袈裟に悲しんで見せた。
それもまた、祐希に「単なる捻挫でしょうから」という冷静なひと言で諭されて落ち着いたのだけど。
とにもかくにも朝から大騒ぎの元凶になった私は、朝食を食べ終えたあとも祐希におんぶされて部屋に戻ってきた。
そして今、数分遅れで雪さんが手当てに現れたというわけだ。