SaltyTriangle*
好き……この気持ちさえなければ、ずっと一緒にいられるのに……。
少女漫画の主人公が、そんなことを思って泣いてるシーンがあった。
当時の私は、「好きでも一緒にいられるじゃん。」とか思ってたけど。
いられねぇわな。
一度好きって思ったら、この距離は保てないんだから。
「辛い、辛すぎる。」
自分の机に突っ伏しながら力無く言うと、前の席に座る瀬戸がスマホ片手にこちらを向いた。
「どしたー?朝から運動したせいで酸欠かー?」
瀬戸の返しが適当すぎると感じるのは私だけか……?
「そんなヤワじゃねぇや。」
まさか、自分が恋に悩む日がくるとはねぇ。
「ま、なんだか知らんが元気出せ。プリン買ってあげるから。」
「まじで?元気出たわ。なめらかプリンな。」
「カヤノって本当現金な奴だよね。そういうとこ好き。」
しばらくして担任が教室に入ってきて、朝のSHR(ショートホームルーム)が始まった。
目の前の席では、瀬戸が机の下でスマホを操作しながら目を輝かせている。
なんか良い噂話でも仕入れたか。
後で聞く…のは面倒臭いな。まぁ勝手に話し出すかな。
なんて思ってたら、体を半分こちらに向けた瀬戸が、私の机を人差し指でトントンと叩いた。
その顔はいつも以上にキラキラしている。
「……え、なに?」
「a組に転入生来るらしいよ。明日!」
瀬戸の言葉に一瞬フリーズする。
転入生?
あれ、高校で転入生って…漫画ではよくあるけど現実ではあんまりないよね。
ええー、転入生来るんだ。
しかもa組って楓のクラス!
「ときに瀬戸よ……その転入生って、女子?」
「らしいよ。しかも青峰(せいほう)高校の人だって。相馬くんの学年トップも難しくなるかもね〜。」