SaltyTriangle*
4限の数学が終わって、私はお弁当を片手に隣のa組に向かった。
クラスの半数ほどが残っているだろうか。
a組の教室にいる人はまばらで、いつも以上に楓の存在感が強くなる。
窓際1番後ろの特等席、楓はすでに端で卵焼きをつまんでいた。
歪な形をしてはいるが、過去のものと比べるとよくできているではないか。
「待っててくれてもいいじゃん、冷たいな〜。」
言いながら、楓の前の席の椅子をクルッと後ろに向けて座った。
楓はパッとこちらを一瞥し、また自分のお弁当に視線を落とす。
「どうした?」
それだけ言って、モグモグと口を動かす楓。
1限が終わった後に、一緒にお昼を食べたいとメールをした。
いつも一緒に食べてるわけじゃない。
カチャカチャとお弁当を開けながら、何から話そうかと考える。
といっても、そんなに複雑な話ではない。
「SHRで担任に怒られてさ。注意されてんの気づかなくて、瀬戸とずっと話してて。」
「へぇ。で、罰は?」
「1週間雑用。」
「また面倒くさいのやらされたな。」
この先の言葉が、なかなか出てこない。
なんとなく、楓も言おうとしてることをわかってる気がして。
それがまた言いづらい雰囲気に感じる。
「別にいいよ。子供じゃないんだから、1人で行ってくる。」
私がなかなか言い出さないからか、楓が相変わらずお弁当に視線を向けながらいった。
申し訳なくて、私の顔が歪んだ。
その時、楓がやっと私の顔をちゃんと見た。
何も言わない私が、何を思ったか、わかってるみたいに。
ハハッと笑った。
少し困ったように、子供を慰めるように、私の頭をくしゃっと撫でて。
「なんて顔してんの。大丈夫だって、むしろ、毎年よく付き合ってくれたな。」
その言葉に、心から安心した。
「ごめんね。今日、一緒に行けないや。」
「改めて言わなくてもわかってるって。さっさと食べろよ、食いしん坊。午後腹減って死ぬぞ。」
先程から一切動かない私の手元を見て、かえでがまた笑った。
「母さんには、俺1人で会ってくる。」