嘘つき天使へ、愛をこめて


「……ねえ、聞かせて。初代総長って何?」


あたしは弱々しく大翔の手を握ると、話を逸らすように笑って見せた。


大翔はまだなにか言いたげにしていたけれど、小さく溜息をついてあたしの頭を撫でる。


「……その言葉通りだ。俺は、胡蝶蘭の初代総長だった。もう、十七年前の話だがな」

「十七年前……」

「俺は当時今のサリと同い年の十七だった。今よりもさらにここらは治安が悪く荒れていた時代だ。ワケありな奴がとにかく多くて、俺はただそういう奴らを救いたいがために胡蝶蘭を創った」


行き当たりばったりでな、と大翔は切なげに笑う。


「なあ、サリ。ここはどんな奴らが集まっているか気づいたか」

「……よく、分からないけど。雅が前に、みんな事情を抱えてるって」

「ああ」


大翔は遠い目をして、窓の外を見つめた。

欠けた月が闇の中にぽつんと浮かんでいる。
< 131 / 225 >

この作品をシェア

pagetop