嘘つき天使へ、愛をこめて


「……そうだな、ここはサリに似た境遇の奴が多いんだよ」

「……あたし?」


大翔は頷く。


「例えば、玲汰。あいつは元々捨て子だった。十三の時に施設から引き取られたはいいが、どうもその家庭に馴染めなかったらしくてな。高校からひとり暮らしをすると言って家を出て、今はここにいる」


明かされる玲汰の過去。

あの玲汰にそんな過去があったなんて、なんでどうしてと思う前に自らの過去と重なった。


ああ、そうか、と思う。

玲汰にどこか自分と似ている部分があると思ったのは、そういう事だったのか、と。


「他の奴らもそうだ。皆何かしらの事情を抱えて、ここにいる。ここはそういう奴らの心の拠り所でもあるんだ」


「……雅は」

「え?」


「雅は、どうしてここにいるの」


どうしてか、気になった。

あのオーラは、普通の人生を送って来た者には到底出せるものではない。

大翔はしばし口を噤んでから、ふるふると首を振る。
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