嘘つき天使へ、愛をこめて
最初はどうしてそんなにあたしを気にかけてくれるのかわからなくて、ただ言われるがままに行動していた。
逆上した父に暴行を受けたこともあったから、怖い部分があったんだと思う。
けれどのちに彼があたしを気にかける理由を聞いたとき、不思議とこの人は信じられる人だと思った。
馬鹿みたいな理由だけれど、耳元で誰かが優しく『大丈夫』と言ったような気がして。
でも、その時初めてあたしは自分から彼に――大翔に抱き着いて泣いたのだ。
自分にも感情が残っていたんだ、と驚いて。
涙が止まらないあたしを、大翔は何も言わずにただ抱きしめ返してくれていた。
振り返れば振り返るほど、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた四年間だったような気がする。
けれど、少なくともあたしが17歳という年齢まで生きていられたのは大翔の存在があったからだ。
恩を返さなければならない。
この命が尽きる前に、命を救ってもらった恩を絶対に返さなければいけないと思っていた。
それなのに、あたしは今、大翔から離れてこんな真っ暗な闇の中にいる。
他でもない大翔に言われて、だけれど。
……なんで?
それはあたしにもわからない。
考えて考え抜いた末でもわからない。
大翔もそれを十分わかっている上で、あたしをこんな裏世界に送り出したのだろうが、結局真意はわからないまま、恩を返す時間もなく、人生を終えてしまいそうだ。