嘘つき天使へ、愛をこめて
「なんでこの白燕に転校してきた?」
「なんで、ですか」
……へえ。単刀直入に、ね。
明らかに警戒の色を見せながら、彼はつららのように冷たい目つきであたしを射抜く。
この質問は、あたしが敵か味方か、あるいは"その他"かを判断するため。
さて、どう答えようか。
しばし先生と見つめあう。
その間、互いに一瞬たりとも逸らそうとはしない。
あたしや先生ではなく、遠巻きにこちらを観察していた生徒たちがごくりと喉を鳴らした。
それほど緊迫した状態で、なんだかおかしくなってきたあたしは、ふっと頬の筋肉を緩めた。
「先生、あたし男には興味ないよ」
「…………は?」
「ここへ男目当て……もしくは胡蝶蘭の男目当てで来る女もいるんでしょ? そんな人たちと一緒にされるのは嫌だから、ちゃんと言っておこうと思って」
突然敬語をやめたあたしに驚いたのか、その内容に驚いたのか、先生は呆気に取られたように目を見開いた。
いやいや、そんな顔しなくても。