嘘つき天使へ、愛をこめて
それに……。
「先生があたしに何をしようと勝手だよ。売られた喧嘩は買う、だっけ。
あたしから売ることはないだろうけど、仕掛けられたらこっちも返す。そういうスタンスはあたしも同じ」
「何が言いたい」
「別に、言葉通りの意味。あたしはただ、人生の節目にこの白燕に転校してきただけ。手を出されなければ、あたしも胡蝶蘭に危害は加えない」
あくまで、やられなければだ。
この異質な族をまとめあげている総長には興味があるけれど、わざわざ自分から危険人物たちに関わりに行ったりはしない。
まあそんなことを言ったところで信じてももらえないだろうし、要注意人物として監視されるのは目に見えているから、結局相手の出方次第ですべてが決まるのだ。
「だから、早く教室行きましょ?先生」
「っ……おまえ……」
まだ何か言いたげにしていたものの、あたしがこれ以上なにも吐かないと判断したのか、グッと飲み込むような表情を見せて歩き出した。
その後を追いながら、小さく息を吐く。
……今の会話。
軽く10人くらいは盗み聞きしているヤツがいたけれど、大丈夫かな。
もしかして早々に失敗しただろうか。
まあ、向こうが手出しさえしてこなければ、直接胡蝶蘭に関わることはなく、1か月後にはあたしはここを去っているはず。