嘘つき天使へ、愛をこめて
「え、え、なにサリちゃん」
「羽間唯織くん」
「え?」
「学校案内してくれたら嬉しいなあ、なんて思ったりしてるんだけど……ダメかな。あたし、こう見えて方向音痴だから迷いそうで」
……まあ、半分嘘だけれど。
何かあった時に、身を隠せるような場所を見つけるためだ。
同行者がいれば変な輩には絡まれずに済むだろうし。
「おー、そりゃいいな。みっちゃん達も一緒に行かない?楽しそーじゃん」
……え。
「ちょ、羽間くん、それは」
「羽間くんじゃなくて、唯織!俺苗字呼び嫌いだからさ、そう呼んで」
「……唯織、なんで総長さんたち誘ってるの?行くわけないじゃん」
「え、行くよ。ほら、来た」
あっけらかんとした唯織の声にその後ろを覗き込めば、意外とノリノリで教室を出てくる月岡たち。
……なんで来るわけ。
総長自らそんなことするとか、普通ありえないんじゃないの?
「……いや」
きっと今、彼らにとってあたしは要観察の危険人物なんだろう。
悪い意味で何かあった時のために、片時も目を離したくない……そんなことを思っているのかもしれない。
もうとことん面倒くさいな。
やはりなかなか思い通りにはいかないらしい。