嘘つき天使へ、愛をこめて
「総長さんと手繋いでれば無駄な厄介事に巻きこまれなくて済みそうだし、そのお誘い受けることにする」
「……君、何考えてんのか分かんないね」
「あんたにだけは言われたくない」
この手を取ったのは、他になにか目的があるわけじゃない。
強いて言うのなら、その手が冷たいか温かいか興味があっただけ。
単なる気まぐれと同じもの。
「冷たいね、サリの手」
「そうかな」
……結果、雅の手の温度は低かった。
けれどあたしよりは幾分温かい。
自分より冷たい人の手を握ったら冷たいと感じるのは当たり前だから、雅が驚くのも無理はないと思う。
ここ数年、自分より手が冷たかった人に出逢っていないからなんとなく残念ではあったけれど。
「俺もさっき繋いだ時思った。サリちゃんの手、なんか氷みたいだなって」
身を乗り出して唯織が言う。
「そんなにか」
「……俺にも、触らせて」
するとあろうことか柊真と玲汰が興味を持ってしまったらしく、あたしの反対側の手をぺたぺたと触ってきた。
ちょ、ちょっとちょっと……!
「本当だ、冷てえ。ちゃんと食べてんのか、サリちゃん」
そして真顔でそんなことを言い出した柊真に、ああ、この人お母さんだと納得する。