嘘つき天使へ、愛をこめて


「人の体の熱ってのは摂取したものから作られるんだ。冷え性ならショウガを――」



柊真がなにやら熱く語り始めたので、慌ててあたしは雅の手を引いてその輪から抜け出す。



「……じ、時間ないんだから、早く行こう」


「せっかちだな、サリ」


「あたしは急いでるの」


「なにに?」


「なんでもいいでしょ」



時間がないんだ……あたしには。


その理由をこの人たちに話すことは、きっと一生ないだろうけれど。


どんな関係になろうと、どうせ1ヶ月の付き合いだ。


そう考えて、またもや深い溜息を付きそうになっていると、こちらを真剣に見つめる視線に気づき振り返る。

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