嘘つき天使へ、愛をこめて
「……櫂、だっけ。なに?あたしの顔になんかついてる?」
黒髪に黒ぶち眼鏡、一見してクールそうな彼。
まあ、この中だったら見た目も性格も一番常識人っぽい。
族に入っていると言われてもどうも納得しがたい、雅とは別の意味で異質な雰囲気を持つ新嶋櫂。
あたしの問いかけに「いや」と首を小さく左右に振り、組んでいた腕を解く。
「……性格はともかく、見た目は良いなと思っていただけだ。だが容姿は置いておいて、その背は小さ過ぎだと思うぞ。何センチだ」
……前言撤回!
「あんたが常識人だと思ったあたしが馬鹿だった」
結局、男は男、不良は不良か。
どいつもこいつも見た目ばかり、腹立つ。
なんでそんなに人の外見について気になるわけ?
背が小さくて何が悪いのよ。
小柄なおかげで狭いところでも潜り込めるし、生まれてこの方、不自由なんて思ったことはないんだからね。
「そう怒るな。人間、見た目は大事だ。俺達だってそれなりだろう。特に雅は容姿でいったら格別……」
「はいはい。確かに、あたしの予想してたより遥かに胡蝶蘭の顔面偏差値は高かったけど。正直、どうでもいい」
「ほう、どうでもいい……か」
面白いものを見るように、櫂は腕を組む。