(A) of Hearts
「なあんだアヤも一緒だってさ。どうするよハニー?」
本当に前田さんがわからない。
だけど微かに空気が揺れたのは感じた。
「お邪魔だし行こうよヒロ」
アヤさんが口を開く。
そしてふたりは、わたしたちの前から姿を消した。
いま息を吹き返したように、わたしの呼吸が荒くなってしまう。
「凄いじゃん。俺の女になるんだ?」
「なりません」
「えええマジ?」
「前田さま。正直にお答えください」
「おっと」
「ふざけないでください」
「なんだよ、早く言え」
「いまでもアヤさんのことが好きですか?」
するとわたしの目をじっと見て、それからふいっと視線を逸らせる前田さん。息を吐き出していく。
「答えてください」
「——ムードのない女」
「はぐらかすのですか?」
「頭も悪いし」
「前田さま」
「イラつく、ムカつく、礼儀なんてなってない。それだけじゃなく、マイペースに盾をつく」
そして大きく息を吐き出した。
それから、こちらへ顔を向ける。
「好きだよ。だけど、わけのわからない館野さんに惹かれているのは事実。いまはアヤよりもキミが気になる存在。嘘は嫌いだから言ったまで。あと、男を追い詰めるのは低俗な女のすることだ。覚えといてね」
吐き捨てるように、そう言った前田さん。
そして舌打ちをしてから、ふたたび深く息を吐き出していく。