(A) of Hearts
「……」
あれ。
なんか泣けてきた。
だけど我慢するぞ。
絶対泣くもんか。
「早くしろよ」
どうしよう。
もうヤダ。
「しかし俺は今日どこで寝ればいいんだ」
「——すみません」
「応えになってないが」
「いまからどこかホテルをお取りします。お支払いもさせてただきますから」
「それならリッツの一番高い部屋な。一泊、そうだな、250万あれば釣りがくる」
に、にひゃく??
「ゲロなんてしてなかったぞ。なぜ嘘をつく」
「ついてません」
「……」
芦沢さんの溜息が聞こえた。
しんと静まり返る部屋。
ふたりして黙り込んでしまった。
こういう場合はどうすれば……。
ええっと、とりあえず。
「シーツ取りますね」
沈黙の壁を無理矢理叩き壊した。だけど黙々とシーツを取り外す作業に取り掛かる。
「勝手にしろ」
すると芦沢さんはそう言って腰を上げ、部屋から出て行ってしまった。
パタンとドアが閉まって、わたしはひとり部屋に取り残されてしまう。シーツは半分ほど捲れあがった状態だ。