(A) of Hearts

「……」


あれ。
なんか泣けてきた。
だけど我慢するぞ。
絶対泣くもんか。


「早くしろよ」


どうしよう。
もうヤダ。


「しかし俺は今日どこで寝ればいいんだ」

「——すみません」

「応えになってないが」

「いまからどこかホテルをお取りします。お支払いもさせてただきますから」

「それならリッツの一番高い部屋な。一泊、そうだな、250万あれば釣りがくる」


に、にひゃく??


「ゲロなんてしてなかったぞ。なぜ嘘をつく」

「ついてません」

「……」


芦沢さんの溜息が聞こえた。
しんと静まり返る部屋。
ふたりして黙り込んでしまった。

こういう場合はどうすれば……。

ええっと、とりあえず。


「シーツ取りますね」


沈黙の壁を無理矢理叩き壊した。だけど黙々とシーツを取り外す作業に取り掛かる。


「勝手にしろ」


すると芦沢さんはそう言って腰を上げ、部屋から出て行ってしまった。

パタンとドアが閉まって、わたしはひとり部屋に取り残されてしまう。シーツは半分ほど捲れあがった状態だ。

< 27 / 222 >

この作品をシェア

pagetop