(A) of Hearts
「ほらどけ」
「え?」
「シーツ外せないだろ」
「あ…っ!わたしがやります!というか、やらせてください!」
「見せてみろよ。どこに吐いたんだ?」
わたしなんかにお構いなく布団を手に取る芦沢さん。だけどゲロなんてあるわけない。
ぼんやりとした間接照明だけの明りだし見えないだろと思っていたのに、
「ああああああ芦沢さん!!!」
なんと布団をめくりったあと、くんくんと鼻を鳴らせながらマットに顔を近づけている…!
そんな芦沢さんを思いっきり突き飛ばしてしまった。
「おっま、なに!!!」
「じ、自分でやりますっ!!」
「はあ?」
呆れ果てたように間延びした声にも、めげてなんていられない!これだけは、なんとしてでも!!!
「芦沢さんは煙草でも吸っててください!」
そしてわたしはビシッとソファーを指差す。頭がぐわんぐわんした。おまけにさっき食べたカラアゲ臭のゲップまで出る始末。
「——ダブルの布団ひとりで抱えていくんだな? よーーーーし、わかった好きにしろ」
するとどこか不貞腐れたようにも聞こえる、芦沢さんの声。
「酒はとっくに抜けたし車でも出してやろうかと思ったけど、それもやめ」
「タクシー使うので大丈夫です」
「ゲロ吐いたなら服も汚れてるんじゃ? タクシーに嫌がられるぞ。布団抱えたゲロ臭い女なんて通報されるかもな」
たしかに。
いやだけど、ゲロはしてない。