(A) of Hearts
だからもしかして、なんかすごい大層なことなのかなって。これから面倒なことに芦沢さんが巻き込まれてしまうのかと思ってしまっただけだ。
ほんとムカつく。
友だちだからとは言え何様なわけ?
超気分悪いんだけど。
『ま、それはさておき。秘書やりたいなら、うちで雇ってあげる。いまの倍でどう?』
「え……」
『いま幾ら貰ってる?』
これには驚いた。
そのまま言葉に詰まる。
だってどうして、こんなこと。
『もしもし?』
「ご冗談ですよね?」
『俺、社長だよ』
「存じております」
『来週からどう?』
本気? もしかして芦沢さんの婚約者であるアヤさんが前田さんの元カノってのが、なんか関係あるとか?
じつは三角関係のこじれだったり?
『もしもし?』
「失礼いたしました。身に余るほど、ありがたいお話で驚いてしまいました。折角のお話ですけれど、わたしまだ勉強中の身ですし芦沢の元で働きたいです」
『慣れてないわりに順応性は高いね』
「——っっ!」
ム、ムカつく!
バカにしてる?
『ただ好みで選ばれたわけじゃないってわけか。気分を害してごめんね。だけどさ? 誰かを傷つけることなんて、俺にとってどうでもいいことなんだよね』
なんの話をしているの?
意味がわからない。
『ふたりには、幸せになってもらいたいから』
「申し訳ございません。おしゃる意味が、よくわかりません」
『芽が出ないうちに摘み取りたい』
「あの…」
『秘書辞めなよ。ほかに会社紹介してあげるから』
待ってよ。