テンポラリーラブ物語
 馴染みの先生が顔を出して、「ハウアーユー?」とお決まりの挨拶をしてきた。

 傍に居た者は「ファイン、サンキュー」とこれまたお決まりのように返している中で、なゆみは「プリティグー」と違った受け答えをしていた。

 なゆみの英語のレベルは、かろうじて中級に毛が生えた程度のものだった。

 決してペラペラとは言えないが、喋れないという人が多数いる中で、充分に意思疎通ができる範囲だった。

 まだ不自由でたどたどしいが、それでもクラスでは積極的に話すのでかなり話せるレベルと思われている。

 周りの人間の方が高度な単語を沢山知っていて、名の知れた大学に通っている頭がいい学生が一杯でも、なゆみの話そうと努力する積極さには敵わない。

 なゆみの素直な性格はここでも誰からでも認められ、誰もそれがでしゃばってるとは思わない。

 みんなにかわいがられてはペットのような存在だった。

 誰とでもすぐ打ち解けて、その人から言葉を引っ張るのはなゆみの得意とする分野なのか、知らずと友達は増えていく。

 その日、クラスで初対面であっても、溶け込みやすいように雰囲気を作るので、なゆみが入ったクラスはいつも賑わいを見せていた。

 だから、氷室のようなタイプを目にすると、自分が努力しても打ち解けないと理解しているので、非常に緊張する。

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