テンポラリーラブ物語
またお客が来て、気を取り直し精一杯に接客し、商品の説明をする。
それが売れ、客からお金を受け取ってそれをレジに入れる時に氷室を一瞥した。
今まで気が付かなかったが、デスクに向かっている氷室の背中はとても大きくがっしりとしていた。
肩幅も広く背広がぴったりと氷室の体に馴染んでいた。
冷血漢だと思っていたが、その背中の大きさのごとく、とても頼りになるほど頼もしかった。
助けてくれた時の氷室は別人のように優しく大人な人だった。
なゆみは感謝の意をもって、氷室の背中を見つめ、再び作業に戻った。
落ち込んでいた気分がその背中を見ると癒されたが、朝の態度と比べるとどうもしっくりこなかった。
気分を害する程失礼なことを言ったり、時には優しく助けてくれたりと、氷室の極端な両面のギャップになゆみは戸惑っていた。
指先だけは器用にキーボードを打ちながら、氷室は考え事をしている。
淡々と作業をしているように見えるが、心は落ち着いていなかった。
朝にデリカシーのないことをなゆみに言ってしまったばかりに、負い目を感じていたとは言え、こんな形で借りを返すようなとってつけたシチュエーションが気に食わない。
なゆみはすぐに自分の非を認めて詫びてきたが、それを逆手にとって恩着せがましくなってなかっただろうか。
本来ならば、なゆみを傷つけたときに謝らねばならなかったものを、それをしなかったことを非常に悔やんでいた。
時間が経てば経つほど、それは難しくなり、タイミングがずれた今は蒸し返したくもなく、氷室はこのまま謝ることがないと確信がもてるほどだった。
そんな理不尽な自分と比べて、仕事では割り切って礼儀をわきまえるなゆみに恥ずかしかった。
本当は失礼で意地悪な氷室を許せないと思っているだろうに。
氷室はなゆみにどう接して良いのか戸惑っていた。
それが売れ、客からお金を受け取ってそれをレジに入れる時に氷室を一瞥した。
今まで気が付かなかったが、デスクに向かっている氷室の背中はとても大きくがっしりとしていた。
肩幅も広く背広がぴったりと氷室の体に馴染んでいた。
冷血漢だと思っていたが、その背中の大きさのごとく、とても頼りになるほど頼もしかった。
助けてくれた時の氷室は別人のように優しく大人な人だった。
なゆみは感謝の意をもって、氷室の背中を見つめ、再び作業に戻った。
落ち込んでいた気分がその背中を見ると癒されたが、朝の態度と比べるとどうもしっくりこなかった。
気分を害する程失礼なことを言ったり、時には優しく助けてくれたりと、氷室の極端な両面のギャップになゆみは戸惑っていた。
指先だけは器用にキーボードを打ちながら、氷室は考え事をしている。
淡々と作業をしているように見えるが、心は落ち着いていなかった。
朝にデリカシーのないことをなゆみに言ってしまったばかりに、負い目を感じていたとは言え、こんな形で借りを返すようなとってつけたシチュエーションが気に食わない。
なゆみはすぐに自分の非を認めて詫びてきたが、それを逆手にとって恩着せがましくなってなかっただろうか。
本来ならば、なゆみを傷つけたときに謝らねばならなかったものを、それをしなかったことを非常に悔やんでいた。
時間が経てば経つほど、それは難しくなり、タイミングがずれた今は蒸し返したくもなく、氷室はこのまま謝ることがないと確信がもてるほどだった。
そんな理不尽な自分と比べて、仕事では割り切って礼儀をわきまえるなゆみに恥ずかしかった。
本当は失礼で意地悪な氷室を許せないと思っているだろうに。
氷室はなゆみにどう接して良いのか戸惑っていた。