別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「えっ、車買ったの?」

驚く私に奏人は頷く。

「昨日、納車だったんだ。少しドライブにいかないか? 理沙を一番に乗せたいんだ」

「う、うん……」

奏人も私も免許は有るけど車は持っていなかったから、仲が良かった頃もドライブデートってした事がなかった。

でもちょっと憧れていたから、嬉しい。

「どこに停めてるの?」

「この先のコインパーキング」

奏人が示す先に目を向ければ、真新しいシルバーの車が見えた。

あれって、外車じゃない? 見覚えのあるマーク。

私は車種に詳しくないけど、多分高い車だ。

よく買えたな……奏人のお給料っていくらなんだろう。
時期社長候補だから、私の何倍も貰ってるのかな?

気になったけど、お金のことって聞き辛い。

黙ったままの私に、奏人が少し心配そうに聞いて来た。

「もしかして気に入らない?」

「え、そんな事無いないよ。こういう形好き。色もいいね」

「良かった。理沙はセダンがいいって言ってたからこれにしたんだ」

奏人は嬉しそうに言う。

そんな会話したこと有ったかな? 思い出せないけど、奏人は車を買うとき、私の好みを考慮したってことなんだ。

よりを戻した訳じゃないのに、いいのかな? 
戸惑うけれど嬉しさもある。

「乗って」

奏人は助手席側のドアを開けて言う。

「うん」

「少し走って、それから食事に行こうな」

「うん」

夜景の綺麗なレストランとかがいいな。

わくわくとしながら車に乗ろうとしたその時、楽しい空気を壊すような、無遠慮な声が聞こえて来た。

「奏人、何をしてるの?」

私は車に乗るのを止めて声の方を振り向き、驚きに目を瞠った。

以前会社の近くで会った女性が、そこに居たから。
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