別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
休憩のチャイムが鳴ると、梓と合流して少し離れた中華の店に向かった。

梓曰く昼時なのに空いて、うちの会社の人もあまり来ない穴場だとか。

料理が特別まずいって訳じゃないけど、大通りから外れた分りづらい場所にある為、あまり人気がないんだそう。

ガランとした店内の隅の席に座り、念の為見知った顔が無いか確認してから梓の報告が始まった。

「さっきの話だけどね、昨日残業中に滝島課長がうちの山之辺室長のところに来たの。それで最初は普通の業務の話だったんだけど、さり気なく奏人君の話を持ち出して、悪印象を与えるような話をし始めたの。聞いていて凄く不快だった、小さな男だよね」

梓はうんざりした様子で言う。

「梓とか他の人もいるところで話したの?」

「あまり人はいなかったけど、私ともうひとりはいたよ」

「そう……わざと聞こえるように言って、奏人のイメージを悪くしようとしてるのかな?」

だとしたら何てせこい事をするんだ。

「本人はそのつもりかもしれないけど、山之辺室長には通用してないと思う。滝島課長のこと嫌ってるからね」

「そうなの?」

驚く私に、梓は頷く
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