別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
何をしているのかは分からないけど、部長達と奏人の打ち合わせは、夕方四時を過ぎても続いていた。

時々出て来てどこかへ出かけて行くんだけど、戻って来るとまた会議室に篭ってしまう。

落ち着かない私は、無意識に奏人の席を見てしまっていた様で、松島さんに指摘されてしまった。

「中瀬さん、北条君の事が気になるの?」
「えっ?……いえまさか!そんな事ないですよ」

過剰に否定してしまったせいか、松島さんは苦笑いになる。

「そんなムキになって否定しなくてもいいじゃない。中瀬さん位の年の子なら彼が気になって当然よ」

「いえ、本当に気にしてませんから」

再度否定したけど、信じて貰えない様な気がする。案の定、松島さんは声を潜めて囁いた。

「彼女いないかリサーチしておいてあげるわ」

……最悪。そんな余計な事をして私の事が知られてしまったら、大変な事になる。

不安でいっぱいになったけど、これ以上必死に否定したら、更に酷い事になりそうだから黙っておく。

「楽しみにしていてね。中瀬さん美人だから上手く行くかもしれないわ……でももう少しオシャレに気を遣った方がいいかもね。中瀬さん似たような服が多いけど、それじゃあいつも同じ印象で飽きられるわよ」

「あはは……つい無難なものを選んでしまうからですよね。次からは気を付けますね」

心の中で、“放っておけ”と毒づきながら、作り笑いを浮かべる。

それにしても松島さんっていつ仕事してるんだろう。

いい加減おしゃべりは止めて、早く仕事に戻ればいいのに。

松島さんに邪魔をされながらも、急いで仕事を進めて行く。

今日は残業はしないで帰るつもりだ。

家に帰って、ゆっくりとこの状況について考えなくては。

サクサクと書類の作成を進めている内に、終業時間の5時30分になった。
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