別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「理沙が俺の方を少しも見ないで無視してるから」

「しょうがないでしょ? 急な事で私だってどうしていいか分からなかったんだから……それより離してよ」

奏人とは別れて二度と関わらないって決めていたのに、なんでこんな事になってるんだろう。

何も知らないで付き合っていた時だって、こんなに強引に抱きしめられた事なんて無かったのに。

外見だけでなく、性格まで変わってしまった様に感じて戸惑ってしまう。
それに本気で逆らえていない自分自身も分からない。

奏人の事なんて許せないし嫌いだけど、突き放せない。

「逃げないで話を聞くって約束するなら開放する」

奏人に耳元で囁かれて、ビクリと身体が震える。

「別に逃げてなんて……」

「逃げてるだろ? 電話もメッセージも無視するし、顔は見ない様にするし」

「だって私達はもう別れたんだし」

そう言うと、まるで罰する様に苦しい位抱きしめられる。

「別れてない。俺は納得してないからな」

「そんな……勝手過ぎる」

初めて見る奏人の強引な一面に、私は押されっぱなしだ。
情けないけど、強い言葉が出て来ない。

「勝手なのは謝る。でも理沙を離したくないんだ」

あの告白より前に聞いていれば舞い上がっていたであろう台詞も、今の私には単純に喜ぶ事は出来ない。

「でも連絡して来ていたのは初めだけだったでしょ?」

本当に別れたくないなら、もっと必死に連絡して来るものじゃない?

「連絡出来ない訳が有ったんだ。その事もちゃんと話すから。不安にさせてごめん」

「べ、別に不安だった訳じゃ……」

この流れ、なぜか私が連絡を心待ちにしていた事になってない?
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