別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
これなら大丈夫だろうと、自分のノートパソコンで資料の確認を進めしばらくすると、松島さんがご機嫌な声が聞こえて来た。

「分かったわ。早速今日から郵便の仕事は私の方でこなしておくわ」

どうやら話が纏まったようだ。

ほっとしていると、松島さんは奏人にさり気なく身体を寄せながら、上目使いで迫り出した。

「郵便だけじゃなく、他にも仕事を回してくれて大丈夫よ。北条君の仕事ならいくらでもフォローするわ」

「ありがとうございます」

奏人は、まんざらでも無さそうだ。

満足そうに松島さんを見返す。
もしかして、積極的に迫られて絆された?

男の人って、ああやって大げさなくらい好意を示されると、嬉しくなるものなのだろうか。

私には無理だけど。

「じゃあ、私は失礼するわ。中瀬さんもあまり北条君の邪魔をしたら駄目よ」

松島さんは立ち上がり、漸く私の方を向いて声をかけて来る。

「……はい」

いろいろと突っ込みたい事はあるけど、口は災いの元なので、全て飲み込み黙っておく。

松島さんは自分が飲んだコーヒーのカップをトレーに乗せると、ご機嫌で部屋を出て行った。

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