ポイントカードはお持ちですか?

「風見さん、元気ないね。こんなことしかできないけど、グミ食べる?」

ポケットから小袋を取り出して差し出したけれど、彼女はほっそりとした手をふるふるっと小さく振った。

「ありがとうございます。でも大丈夫です。ダイエット中だし」

恥ずかしそうに笑う風見さんは、予想できるでしょうけど全然太っていない。

「ダイエットか・・・耳が痛い。年取ると代謝が落ちるのに、風見さんがダイエットして私がダラダラしてるなんて間違ってる・・・」

「咲里亜さんは全然太ってませんよ?」

「30過ぎるとね、体重の問題じゃないのよ。内蔵脂肪?たるみ?見た目は普通でもメタボ診断されることもあるんだよ」

「・・・そうなんですね」

「若いっていいなー、って思うけど、私が風見さんの年齢の時は今以上にもっと何も考えてなかったから時間を巻き戻すだけ無駄だな」

誇張じゃなくて本っ当にぼんやり毎日を過ごしていた。
とにかく早く帰ることしか考えていなかったし(それは今でもそうか)、恋愛も適当だった。

「もっといい人が現れるまで」「ダメになっても次があるし」と思って付き合っていれば、うまくいくはずもない。

「咲里亜さんはちゃんと仕事もして、自立して、周りの人にも愛されて、すごく羨ましいです」

「ええー!私生活なんて寂しいものよー!本当に風見さんには私のようになってほしくない。ならないと思うし。風見さんの未来の方が明るいよ」

きっと結婚して、子どももできて、仕事も続けて、いい嫁、いい妻、いい母を上手に兼任するのだろう。

どれかひとつでいいから、そういうものに私もなりたい。

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