ポイントカードはお持ちですか?
時刻が12時を過ぎ、深夜の時間帯に入った頃、窓の外に突然人影が現れた。
ふっくらしたおじさん(おじいさん?)を『サンタさんだ!』とロマンチックに思うはずはなく、
「ぎゃあああああ!」
と悲鳴をあげてしまった。
「『ぎゃあ!』じゃないよー。あんたたち、一体何してるの?」
暗闇の中出勤してきたおじさんはこの小さなガソリンスタンドの経営者で、近所の人から「ずっと停まっている不審な車がある」と連絡を受けて様子を見に来たらしい。
私たちとしてはとても幸運なことだった。
事情を話したら機械を動かして給油してくれた。
でも実はそれよりも、
「すみません!お手洗い貸してください!!」
用地交渉中のお茶が効いて、ずーっと我慢している状態だったのだ。
伊月君との幸せな時間も、いまいち集中できず、「いざとなったら、あそこか・・・?」と茂みに目星を付けるほど追い込まれていた。
想いが通じて間もなく振られるところだったかもしれない。
おじさんは私にとって、紛れもなくサンタクロースだ!
「イブをここで過ごしたの?俺だってここに泊まったことないのに」
「いや、そんなに長い時間じゃありません」
恥ずかしくて少々嘘を織り交ぜた。
「はい。これサービス」
事務所内には自動販売機があったようで、あたたかい缶コーヒーをごちそうしてくれた。
「わあ!ありがとうございます!もう涙出そう」
「俺の胸を貸してあげたいところだけど、そっちの兄ちゃんに殺されそうだからやめておくよ」
私から見るといつも通りの無表情だけど、このサンタクロースに対して失礼なことに、機嫌は良くなさそうだ。
「ありがとうございます。そのお気持ちはとっても嬉しいです」