ポイントカードはお持ちですか?


おじさんに何度もお礼を言って別れ、数時間ぶりに車を走らせてすぐ、

「咲里亜さん」

隣から不穏な声が聞こえてきた。
嫌だなー。怖いよ。

「きさくに声をかけるのはあなたの長所だけど、必要以上に慣れ慣れしくしないでね」

「そんなつもりはないんだけど」

「良二さんになんて、いつもベタベタベタベタ触られてるでしょ?」

「言われて見ればそうだね。でも向こうだってそんな気ないよ?」

「ダメ」

心が狭いな。

「あーはいはい。わかりましたー」

「また適当に返事して」

ブツブツ文句が聞こえたけど、無視することにした。

「早く帰れてよかったね」

「俺はもっと長くてもよかったんだけど」

「私はあったかいお風呂に入って、あったかいお布団で泥のように寝たいよ」

「寂しいこと言うね」

「一緒に寝たらいいじゃない」

「早く帰りたい」



< 130 / 143 >

この作品をシェア

pagetop