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交代でお風呂に入ってあたたまり、私たちは一緒のベッドで眠った。

あの夜以来の伊月君の部屋。

今夜はただ手を繋いでいた。

あの夜と違って、触れているのは片手だけ。
それなのに、あの時より伊月君が近く感じる。

あの日と同じようにドキドキするのに、一人でいるより安心しきって、私は希望通り泥のように眠った。

あまりに幸せな夜だった。





まだ暗い中、目を覚ます。
そろそろ仕事に行く準備をしなければならない。

睡眠不足で少しボーッとしたまま、伊月君を起こさないようにそろりとベッドを出た。

ところが、

後ろから伸びてきた腕が、私の腰をガッチリ捕らえた。

「ぎゃあああああ!」

本日2度目のホラー!

「また、逃げるの?」

ホラーそのものの怨みのこもった声で伊月君が言う。

「普通に起きただけだよ!もう出勤の準備しないと」

「・・・仕事、休みたい」

伊月君にしてはずいぶん珍しいことを言う。
ほとんど徹夜だから当たり前か。

「そう?じゃあ、私だけ行くから」

「咲里亜さんもだよ」

「え?ダメだよ。私、午前中に業者さんと打ち合わせ入れてるもん」

「・・・わかってる。言ってみただけ」

聞いたことのない、なんだかかわいらしい声だった。

振り向くと、まだぼんやりとした朝の光の中に、寝起きでぼんやりとした伊月君が見えた。


奈美さんの冷静な目で見ると伊月君は以前の「モサッ」に戻っているらしいのだが、恋やら何やらでやたらと勝手に脳内補正される私の目には、ハリウッド俳優すらひれ伏す美形に見えている。

いや、私は日本人がいいからハリウッド俳優より断然好みだ。



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