ポイントカードはお持ちですか?

「もっといいものにしたら?」

「それがいいんです」

「もしかしてものすごく高いの?」

「200円だったと思います」

「遠回しに断ってる?」

「いいえ。来週の日曜日にでもごちそうしてください」


どうやら、本当の本当にソフトクリームを所望しているようだ。

「公用車でソフトクリーム屋さんに寄るのは気が引けるし、休みの日に一人で行くには少し抵抗があるので」

「ああ、なるほど」

お金の問題じゃなく、食べたいけど食べにくい、ということらしい。
確かに男一人でソフトクリームって勇気がいるかもしれない。


「咲里亜さん、この後大丈夫ですか?」

「え?ソフトクリームは来週の日曜じゃないの?」

「用地交渉です。同行してもらえるように言ってありましたよね?」

見えない視線がカーテン越しに刺さってきた。

仕事中でしたね、すみません。

「大丈夫。準備できてるからもう行けるよ」

「じゃあ、公用車を正面に持ってくるので出て待っていてください」


後ろ姿がパーテーションの陰に消えたのを見送ると、ふうううっと心臓の力が抜けた。


私、ずーっとドキドキしっぱなしだった。


30になったいい大人なんだから、これが何かはもうわかる。
わかりたくないけど、残念ながらわかる。

あーーーー、困った!



伊月君を、好きになってしまった。




< 36 / 143 >

この作品をシェア

pagetop