ポイントカードはお持ちですか?
4 恋は楽しいものですか?



「これがおいしいのっ!もうほんっとうにおすすめだから!」


用地交渉は10分ほどで終了した。

工事の計画について聞かれることを想定し私も同行したのだけれど、一切出番はなかった。

その後約2時間にわたって、私と伊月君はなんらかの根だか茎だかについて熱く語られている。

「さっと湯がいて水にさらすの。それで、こう!こうやって少しずつ剥いていくと・・・ホラ、ね。きれいでしょう?なかなかコツがいるんだけど、・・・ホラ!こうやって少しずつ剥くのがコツなの。・・・ホラ!一度湯がいて水にさらしておいたからこんなにきれいに剥けるの。・・・ホラ、ね?」

大量にあるなんらかの根か茎(名前はずいぶん前に聞いたけど知らなかったし覚えられなかった)の薄皮を、本日の交渉相手であった石本さんがひたすら剥き続ける。

自身が所有する立木の値段には大した興味を示さなかったのに、この根(もう根でいいや)の話は延々終わらない。
小さな輪を何十回もループしているのだから当然だ。

これは石本さんが家庭菜園(と言っても本格的な畑だ)で栽培していた何かの根で、本体はすでに食べてしまったらしい。

しかし石本さんはこの根こそがおいしいのだと熱弁をふるい続けている。
その言葉に嘘がないならば、本体より先に根がなくなるのではないかという疑問は、到底口にできない。

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