ポイントカードはお持ちですか?

・・・・・・・・

・・・・・・・・遅い。


結構時間経ったよね?
「倉庫」ってまさかメーカー本社(県外)の倉庫のことだったりして。

気になって探しに行ってみると、ダンボールがのっしのっしと階段を上ってくる。
それがまさに私が探していた風見さんだった。

「ちょっと、ちょっと!危ないじゃない。こんなに無理して!」

それなりに重さのある大きなダンボール箱を二つ重ねているから風見さんには私の姿が見えないらしい。

「ひとつ持ち上げるよ」

声を掛けてからダンボールを持つと、小作りながら愛らしい顔が現れた。

「咲里亜さんでしたか。うちの部の発注分がまだ届いてなかったので、他の部から一時的に借りて来たんです。時間かかってしまってすみません」

「それは構わないけど本当に危ないよ。ダンボールが崩れたら風見さんだけじゃなくて他の人も怪我するかもしれないし」

「重ね重ねすみません。いけると思ったんですけど。こんなことひとつ満足にできなくて、私ダメですね」

臨時職員の任期は2年で、彼女は2年目。
彼女もあと4ヶ月で退職だ。

今就職活動中だという彼女も、人生に不安を抱えているのだろう。

「風見さんは頑張ってるよ。確かに今はちょっと無謀だったけど、それだけでダメなんて落ち込むことないって。さっきファイルがないって困ってたとき、声かけてくれて助かったもの。気にしない、気にしない」

「ありがとうございます。私、咲里亜さんみたいだったらよかったです」

「・・・言葉は嬉しいけど、本当に私になったら絶望するよ。絶対に」


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