縁側で恋を始めましょう


「もう、何がニートよ。かなりの有名人だったんじゃない」

香苗は苦笑するが、私は笑えない。
暁がこんなに凄い人だったなんて知らなかった。
確かに小説家だとは聞いていたが、こんなに有名人だとは思っていなかった。売れるか売れないか、そんなところだろうと勝手に思っていたのだ。
そういえば……。ハッと顔を上げる。
この前、暁の部屋に初めて入ったときに本棚にやたらと空野アカツキの本がそろっていた。
あの時、まさかと思って打ち消した一つの可能性。
それはどうやら正解だったようだ。
そういえば、暁も『そのうちわかるよ』と話していた。それってつまり、サイン会をすることで顔が出るからということだったのか。
初のメディアということは、多くの人が暁が空野アカツキだと知らなかったということになる。

でも、でもさ。


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