縁側で恋を始めましょう

「教えてよ……」

幼馴染でしょ、一緒に暮らしているでしょ。隠さずに、もったいぶらずに教えてほしかったな……。

家に帰ると暁が「おかえり」といつものように出迎えた。
その顔はいつもと何も変わらない。

「……ただいま」

低い声で返事をすると、暁が首を傾げた。

「何? どうかした?」
「うん……」

暁は不思議そうに私を見ている。
しかし、私はその横を無言で通りすぎた。

この暁が、空野アカツキだったなんて。どうして教えてくれなかったのだろう。
一言くらい言ってくれていても良かったのに。
あの写真の暁は知らない人みたいだった。


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