雪の日に祝福を…。
◇11◇ 発表 ~なごり雪~
あなたも私に雪を残して行った。
私もあなたに雪を残した。
感性の一致が招いた偶然だったのだろうか。
あの日は、1本の電話から始まった。
《 《
受賞作品発表まで8時間。
「はい。」
忙しい朝の電話ほど厄介なものはない。
「若狭さん。先日の検査結果が出ましたので至急当院までお越しください。」
「今ですか?」
「はい。先生からの説明がありますのですぐにお越し下さい。」
「解りました。」
電話を切り腑に落ちないながらも行くことにした。
「燵夜くん。私ちょっと用事済ませてから会場に行くね。」
「うん。遅れないで。」
「はーい。」
出掛けのキスを交わしてマンションを先に出た。
「はい、解っています。今日話しをします。」
それは、確認の電話だった。
「いりません。自分で全部させて下さい。はい、はい。解りました。」
電話を切って玄関を開ける。
「青いマスキングテープの貼ってある物を運んで下さい。」
「「解りました。」」
作業着に身を包んだ人たちが次々に荷物を運び出す。