雪の日に祝福を…。
  


「しなかったんですか?」


「はい。本人が決めました。」


「今は、緩和ケアしかしていません。これも本人が選びました。」


「そんな・・・・・・。」


「もう時間がないのでご家族にいつでも連絡が出来るようにしたかったんです。」


「家族は、いません。」


「そうですか。」


「何かあったら俺に連絡を下さい。」


 すぐに名刺を渡す。


「解りました。」


「傍に居ても?」


「どうぞ。」


 病室に戻り備え付けのソファーに座る。


「どうしらいい?」


 かつて結婚を約束しその印に送った指輪をしていた手を握る。
 元々綺麗な白い手だったが今は、もっと白く細くなっている。


「月依。」


「煩いわよ。」


「月依・・・・・・。」


「落ち込んでるの?」


「なんだよ。」


「落ち込みなさい。こんな時傍に誰も居ないのは、あなたの所為。」


 嫌味を言って笑う。


「お前。」


「馬鹿ね。」


 涙を見せるので頭を撫でた。


 》 》


 〝愛〟が欲しいと思って・・・でも、渇望していても与えられないのだと知った。
 同じくらい与えなければならない。


  
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