雪の日に祝福を…。
  


 なぜあの引き際の良さを疑問視出来なかったのか。
 自分を選ぶと、応援すると言ってくれ誓いのキスまで彼女は、くれたのに。


 》 》


「おはよう、月依さん。積もったね。」


 縁側に立って声を掛ける。


 どれだけ時間が流れても彼女への想いは、枯れない。愛も消えない。

 燵夜は、画家として成功を掴み父親の元を離れた。誰とも付き合うこともなくもうすぐ彼女の年を追い越してしまう。
 こうして枯れず消えない彼女への〝愛〟を連れて彼女の居ない世界を生きている。


 外には、昨夜遅くに降った雪が積もっている。


『雪は、嫌いよ。』


「大丈夫。俺が傍に居てあげる。」


 笑顔を向ける。


『そう・・・。』



「月依さん・・・好きだよ。」


 それは、今はもう届かない何度目かも忘れてしまった告白。


『私も。』


 2人の心は、同じだと知っている。

 2人は、今でもそこに居る。


 》 *  》 *


 〝愛〟を求めて最期に愛する人だけをその瞳に映して旅立った彼女は・・・雪の日が嫌いでした。

 だから、今は…いまだけは・・・雪の日に祝福を・・・・・・。



            ━ Fin ━


  
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