雪の日に祝福を…。
  


 含みのある物言い。


「平気ですが。何か気になることでも私がしていますか?」


「いいや。そうじゃないんだ。色々あっただろうからフォローをしてくれって上からも言われてるからね。」


「お気遣いありがとうございます。」


「いやいや。部下を心配するのは、当然だよ。」


「(タヌキ。)」


 ハッキリ言われなくてもなんとなく言いたいことは解っていた。


「仕事頑張って。」


「失礼します。」


 オフィスを出ると同僚が一斉に素っ気なくなる。


「(ヤな感じ。)」


 無視して席に戻る。


 》 》


 私は、なぜ同じ職場に拘(コダワ)っていたのか。
 もしかしたら彼の傍に居たかったのかもしれない。やはり簡単に吹っ切れるほど単純では、なかったようだ。

 あの頃バーにもなかなか行けなかった。マスターには全部話していたからだ。
 マスターのモットーは。〝酒は楽しく呑め〟だからあの頃の精神状態では顔を出せない。
 だからかもしれないあの子に声を掛けたのは。


 《 《


 雪の降る中0時を回る前に会社を久しぶりに出てタクシーも拾わずフラフラと歩いていた。


  
< 42 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop