日帰りの恋
 信号待ちするたびに、神田さんが私を窺う気配があった。
 神田さんにも余裕がなくなっているのがわかる。

 だからこそ覚悟しなきゃいけない。きちんと向き合わなければ。

 二人は今、同じ気持ち、同じ感覚で触れ合おうとしている。
 一方的じゃないことを伝えたい。


 神田さんが車を停めたのは、神社の駐車場だった。

「家族や友達と、いつもお参りに来る神社だよ」

 車を降りると、二人は並んで歩いた。
 広い駐車場には自家用車のほか、観光バスも停まっている。

 道を渡ったところに土産屋と休憩スペースがあり、バスで訪れた団体客が観光を楽しんでいる。

「地元民ばかりでなく、遠くからも参拝客が訪れる。この辺りでは有名な歴史ある神社なんだ」
「なるほど。そういえば趣がありますね」

 大きな鳥居を見上げ、つい立ち止まる。

「真山、危ないよ」
「あっ、すみません」

 参道を歩く人のじゃまになっていた。
 神田さんは私の手を取り傍に引き寄せ、そのまま寄り添うようにして歩く。

 どこか遠慮しながらも離れないという、ぎこちない行動が私を緊張させた。
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