ありふれた日常の特別なソレ
正面玄関前に張り出された名簿には、同じ中学の子の名前もあるものの、顔を知ってる程度の人ばかり。
それに元々私のいた中学から浦田第一高校に進学する生徒も少ない。
それなのにこのクラス分けは酷すぎるんじゃないかなぁ!?
隣のクラスのC組には七人いて、こっちには四人しかいないよ!
王子様探しより一年間クラスでやっていけるかの方が気になるよぉ。
「えーっと、どれどれ?俺のクラスはーっと!」
ずしっ
頭上から声が降ってきたと同時に急に頭が重くなる。
この感覚を私は知っている。
まるで肘置きのように扱われているこの感じ…。
こんなことするのは一人しかいない!
「なっちゃん!人の頭肘置きにしないでっていつも言ってるのに!!」
「おお!ちょうどいい肘置きかと思えばふみだったか!」
「分かっててやったでしょ!」
「いやー、焦ったー。ふみ、お前ちゃんと起こせよな。入学式に遅刻するところだったろ。」
「起こしたよ!三回も朝電話したのになっちゃんが出なかったんじゃん!」
「お前のそういう所ダメな。諦め早すぎ。俺が起きるまで電話し続けろよ。」
「言い分が勝手すぎる!」
この自分勝手な男子は私の幼なじみの恵比寿棗。
あだ名は[なっちゃん]。
猫みたいなつり目に、口元にちらりと覗く八重歯は昔から変わらないのに、中学で急に背が伸びて、今では高校一年生ながら身長170cmのノッポさんになっている。
昔は私より小さかったのになぁ。
おかげで私はいつも暇さえあればなっちゃんの肘置きになっている。
「……その格好、怒られない?」
「え?どっか変?制服間違ってねえだろ?」
どうしてこうなったんだろう。
小さかったなっちゃんは成長し、なんと今では入学早々シャツを第二ボタンまで開き、ネクタイを緩め、ブレザーもボタン一つ締めずに登校する子になっちゃいました。
中学卒業後すぐ髪を金に染め、両耳にシルバーのピアスを付けた典型的な15歳。
今もその金髪は周りの新入生の中で群を抜いて目立っている。