ありふれた日常の特別なソレ
別になっちゃんは窃盗や恐喝なんてする不良じゃない。
ただ見た目が不良っぽいだけで、中身は比較的一般常識を持ち合わせた男子高校生だ。
勉強はできないけど。
中学卒業後すぐ髪を金に染め、両耳にシルバーのピアスを付けた典型的な15歳。
その金髪は今も周りの新入生の中で群を抜いて目立っている。
「あの人ちょっと怖いね。」
「同じクラスだったらどーしよー。」
「あの金髪の人かっこよくない?」
「背高いねー。ジャニーズ系?やんちゃそうだけどいいね。」
みんな、なっちゃんを見てる。
なっちゃんを見て、怖いとかいいとか、思うことは皆バラバラ。
どうせなら私はなっちゃんのことよく思ってほしい。
だから入学式だけでも髪の毛黒染めしようって言ったのに…。
昨日も電話で散々言って、はいはいやりますって言ったのに!嘘つき!
「あ。もしかして嘘ついたの怒ってる?」
私の考えを読み取ったらしいなっちゃんが、気まずそうに頬をかく。
「怒ってるよ!ちょっとだけ!そんなんじゃなっちゃん危ない先輩に目つけられるかもしんないし、先生にも怒られるよ!」
「もんとか使うな。子供か。それにこの学校校則ゆるいし大丈夫だって。」
「子供じゃない!せめてネクタイくらいちゃんと結んでよ!」
「ぐええっ!ふ、ふみ!締めすぎ締めすぎいぃ!」
「二人とも落ち着いて…!」
信ちゃんの子鳥のさえずりのような注意の声で、ようやく私は我を取り戻した。
わ、私としたことが暴走してしまった…。
はずかしい。