夕星の下、僕らは嘘をつく
隣では、同じく皿を受け取った彼がおいしそうにアップルパイを口に運んでいる。
甘いものは苦手じゃなかったのか、と私も一口食べる。
叔母が言うほど、甘さ控えめには感じられなかった。
 

やっぱり、嘘だったか。
とふと視線を落とすと、彼の足がそわそわと動き続けていた。
もう一度顔を見ると、笑顔のまま叔母と会話してアップルパイを食べている。
 

嘘つきはきらいだ。
だけど、今の彼の頑張りだけは認めてもいいかもしれない、とちょっとだけ思ってしまう。
 

ふたりの会話は続いていた。
私なんかいる必要ないじゃんと思いながら黙々とアップルパイを食べる。
焼きたてのパイはさっくりしていて、ほんとうにおいしい。

隣に誰もいなかったらもっと堪能できたのだけれど。
 

甘くてやさしいアップルパイを噛みしめながら、叔母のことばも一緒に飲み込むんで、ぬるくなったココアを一口。
 

ほんとうに必要とされてるのかあやしい。
 

けれどもし、ほんとうなら。
私なんかでもいいのなら。
それはやっぱりちょっとうれしいのかもしれない。


「なかなか通じない想いを抱き続けるのも、案外いいものですよ、きっと」
なんの会話かわからないが、隣の彼が言った。
挙げ句こっちを見て微笑みを見せる。
 

アップルパイに、ココアは甘すぎた。
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