夕星の下、僕らは嘘をつく

そういえば今日はクリスマスイブだ、と気づいたのは彼が帰ってから二時間経った頃だった。

家から一応持ってきた宿題を眺めていたけれど、気づいた途端、どうでもよくなって閉じた。
だってクリスマスだ。過ごす相手はいないけれど。
それでも、叔母とささやかなパーティぐらいは開けるはず。今の私にはそれがいい。
 

それなら、今のうちに叔母へのプレゼントを買いに行こうか、と立ち上がって考え直した。
昨日の夜、叔母に雑貨屋とか本屋の場所を教えてもらいはしたものの、どちらもそれなりに人が集まりそうな場所だった。
かといって通販もなんだか味気ない。ちゃんと見て選びたい。
 

しばし部屋で葛藤していた。
すると携帯から通知音が響く。
 

また莉亜だろうか、と思ったら違った。
友哉だ。

胃がちくちくと痛み出す。
メッセージはただひとこと『元気?』だったけれど、それがまた随分といやな気分を運んできてくれる。
 

一ヶ月前に別れたのに、なにが元気? だ。
 

もういいや無視しておこう、と思った。
拒否すればいいのだけれど、それをすることすら億劫なのだ。
それに拒否したら今度は電話とか莉亜を介してとかやってきそうで、よけいに嫌だった。
 

それよりもプレゼント、と意識を切り替えようとしたが、何度も通知音が鳴る。
とくに誰からの連絡を待っているわけでもないのだから、サイレントにして鞄にでもしまっておこう。

そう考えて携帯を手にしたところ、新着のメッセージが浮かんだ。


『今度サッカーの試合があるんだけど、応援しに来てくれないか?』
 
思わず携帯を二度見したし、そのまま窓の外に投げてやろうかと思った。
さすがに我慢ならなくなって、返信を打つ。

『意味わかんないんだけど』
 
文字を打つのすら面倒に感じたけれど、スタンプや記号じゃ誤解されかねない。
 
ところがそれだけはっきり言っても、友哉には通じなかったらしい。
むしろ返事がきたことを喜ぶようなスタンプが返ってきて心の底から泣きたくなった。

『元気してた? 久しぶり!』
 
その上会話が振り出しに戻った。
つきあってた頃はこの馬鹿さ加減も好きだったような気がするのに、今となってはただ苛つくだけだ。
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