豊中まわり
デート当日。

朝から何度も髪型を直して、鏡とにらめっこして、
絶対ママも変に思ってる。

彼氏出来た。っていつ言うべきなのか迷う…

皆どうしてるんだろう。

うちのママは反対とかしなさそうだけど。

小さい頃から、

「 イケメンの彼氏連れてきてねー」

って言ってたし。

でも実際、どう切り出していいのかわからない。

時計に目をやるともう2時半を回ってる。

もう行かないと!

急いで待ち合わせの駅に向かった。

駅前は、ちょっと前まで 果樹園や空地 ばかりだったのに、急に開発されて、おしゃれなカフェや飲食店が増えた。

小さい頃からモノレールに乗るのは大好きだ。

高い場所から見下ろす風景は、下を走る車がミニカーのように見えて面白い。

改札前に着いた。

良かった。まだ来てない。

前髪をちょっと直してスマホを見た。
するとすぐに、

「深瀬っ!ごめん。待った?」

初めてだ。こういうの。

小説やマンガではよくあった。

「ううん。今来たところ。」

言ってみたかった。

氷上…かっこいいな。

制服かジャージのイメージしかなかったから、すごく新鮮。

制服だって、中学のダサいジャージだって、氷上が着ればかっこよくなっていた。

何着ても似合うんだな。

ダメージジーンズにTシャツ、すごく似合ってる。

私、隣にいておかしくないかな。

あんまり目線が合わないのは気のせいかな。

服装おかしかったかな。

「行こっか。」

ふたりで車両に乗り込むと、珍しく混雑していた。

私は扉を背に、氷上に守られるような姿勢になった。

こんな時思う。

もっと背が低かったらいいのに…

163センチ。身長は私のコンプレックスのひとつ。

守られるような小さい女の子が羨ましい。

氷上は身長高めだから、おかしくないかもしれないけど、デカイ女の子嫌じゃないかな。

気にしながら そっと氷上の顔を見つめた。

目があった瞬間、少し揺れてバランスを崩した。

体温を感じるほど体が近づいた。

「大丈夫?」

耳元で氷上に囁かれ、自分の右耳が赤くなるのがわかる。熱い。

「ありがとう。」

と見上げたら、顔と顔が近くて
顔まで赤くなった。

ドキドキが止まらない。

私ばっかり動揺してる。

もう顔を上げられない。

景色なんて全く目にはいらなかった。
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