晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「そんなんじゃないにしても、側からみたらやっぱり近いのよ、あんた達の距離。そりゃ長谷のこと好きな子達も尻込みするわ」


気にしない強靭なハートの持ち主も稀にいるみたいだけどね、と真田。

お弁当に視線を落としつつ、心に靄が広がっていくのを感じる。


「康介のことを好きな子からすれば、私……絶対に邪魔だよね。幼なじみなんて名目で、ずっと一緒にいるわけだし」


考えたこともなかった。

近くにいるのが当たり前すぎて、その当たり前が誰かの弊害になってるかもなんて。

ずーんと沈みかける私を、


「登坂が気を回すことでもないでしょ」


と、思案した様子を見せていた真田がひょいっと拾い上げる。


「あんた達には、幼なじみとして積み重ねてきた時間があるんだから。どれだけ長谷のことを好きな子でも、それを壊す権利なんかないわよ」

「真田……」

「距離が近いってだけで付き合ってるわけじゃないんだし、ほんとに好きなら登坂のことは気にせずアタックするでしょ。だから、登坂が気にすることないの。

今までずっと告白を断ってきたみたいだし、今回だってどうせ受け入れないんだから。勝手に気を遣って距離をとったりなんかしたら、あいつが不憫だよ」


淡々と言ってのけた真田は、食べ終わったお弁当箱を慣れた手つきで片していく。

相変わらず、サバサバしてんなぁ……。

サトタツの一件で真田の新たな一面を知ったけど、基本的に彼女は変わらない。私のよく知る、真田柚麻だ。


サトタツは、年度が終わってから長年付き合ってきたという彼女と入籍し、その左手薬指には輝きが添えられるようになった。
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