ホテル王と偽りマリアージュ
要さんは、ピクッと眉尻を上げて反応した。


「ふざけてる?」

「だ、誰が聞いても正気じゃないですよね」

「皆藤の嫡男の『嫁』に横恋慕することが?」


即座に畳み掛けられて、私は思わず口籠る。
その隙を突くように、彼はグッと身を乗り出した。


「『ふざけてる』は心外だな。本気だよ。俺は、君が好きだ」


真剣な顔であっさり言われ、私はなにも言い返せない。
不覚にもドキドキしてるのを誤魔化すように俯き、テーブルの上で湯気を立てるコーヒーのカップばかりをバカみたいに見つめた。


「信じない? まあ、簡単には信じられないか。少なくとも対外的には、俺は一哉の妻に情を寄せる不届者だからね。もちろん椿さんも、俺を受け入れたりしたら相当な言われ方をするだろう」

「なら……!!」

「それでも欲しいから一哉の前で言った。俺なりに正々堂々と宣戦布告したつもりだ」


まっすぐ射抜くような瞳を向けられ、私はそれ以上声を出せない。
一瞬浮きかけた腰を再びしっかり椅子に戻し、肩に力を込めて大きく顔を俯けた。


ちゃんとはっきり拒まないといけないのに、要さんの言葉はまっすぐで、避けようもなく私の胸に突き刺さる。
これ以上この人の本気をぶつけられたら、立っていられないんじゃないかと思うくらい、強烈に私を揺さぶる。
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